道場コラム 『まずは、学習意欲や向上心をつくる』

『まずは、学習意欲や向上心をつくる』 2018年7月

 学習とは、一言で表せば“できなかったことをできるようにすること”。このできなかったことが、「できちゃった」とき、子どもは大きな快感を味わう。そして、より学習を面白いと感じるようになり、「明日もやりたい」という学習意欲が生まれる。その根底にも、失敗があると思う。問題が解けなかった。その後、どうすればできるかを考えて試行錯誤し、最終的にうまくいくことで、「やった!」、「できた!」という大きな達成感が生まれるのだ。その感覚が楽しいから、また学習を頑張る。「もっともっと学びたい」、「いろいろなことを知りたい」という向上心が生まれる。
 学習意欲と向上心。この二つを子どものうちに体得することができれば、どんな子どもでも伸びると確信している。言い換えれば、教育する側は、それを子どもに植え付けることこそまずやることではないだろうか。学習意欲や向上心と言うと大げさに感じるが、要するに「明日またやろう」、「よりよくしよう」という気にさせるということだ。その方法を教材の形に落とし込んだのが、“サボテン”。すべて同じ形の計算問題だけが並ぶ、単純なドリルで、これを毎日1ページ、一か月間解く。数字が違うだけで基本的には同じ問題を速いスピードで繰り返し解く。これを毎日行っていると、どんな子でも昨日の自分より速く、正確に解けるようになってくる。昨日の自分より今日の自分が成長していることを実感できる。“サボテン”は、花まる学習会が提携している公立小学校の授業にも取り入れられ、大きな効果を上げているのも、自分の成長を感じるからだろう。昨日の自分に勝つ。多くの子は他の子を意識して、出来具合を比べようとしたり、できないことを恥ずかしがって隠そうとしたりする。学校の現場は他者との比較にマヒしている。絶対にほかの子と比べず、自分のことだけに集中することと、昨日の自分よりタイムを速くすることだけに意識をフォーカスすることを徹底させる。私が見るのは、できなかったことができるようになっているかということだけ。
 例えば、分数の計算問題。最初はまったくできなかった子が、一週間後に約分だけはできるようになっていたら、計算の答えは合っていなくても花丸を大きくつける。正解を出したから花丸ではなく、伸びたから花丸。そこを評価してあげてこそ、子どもは「明日もまたやりたい」と思えるのだ。
 先が見えない中で、自分で判断を下して行動を起こすとき、背中を押してくれるのは「まあ、なんとかなるんじゃない?」という根拠のない自信のようなもの。自己肯定感と言い換えることができると思う。本当の自己肯定感を持つためには、「昨日の自分より成長した」という実感が大切だ。隣の子よりも自分のほうが速い、あるいは点数が良いという他者との比較は、分かりやすく自分を肯定できるが、もっと速い子を目の前にすれば簡単に崩れてしまう揺るぎのない自己肯定感をつくるのは、昨日の自分自身よりもよくなっているという実感と言える。本物の自己肯定感を持った子は、できないことを隠そうとはしなくなる。むしろ「できないことができるようになることは面白い」、「もっとやりたい」と考えるようになる。
 今日は、昨日の自分よりよくなることだけを考えればいい。そして明日またよりよく速くやろう。それさえできていれば、伸びない子は絶対にいない。昨日の自分にはできなかったことが「できちゃった」。だから「明日またやりたい」。この連鎖をつくる。

西郡学習道場代表 西郡文啓