道場コラム 『試す力』

『試す力』 2019年4月

 まずはやってみる。失敗したら、また別のやり方を考えてやってみる。なぜ上手くいかないか、考える。そして、やってみようと試行錯誤する力を学習習慣の一つとして身につけたい。学習にしても、遊びにしても、いろいろなことにチャレンジする積極的な子と慎重な子がいる。慎重な子は、周りからの評価を気にし過ぎる傾向があり、負の評価を恐れて、「間違ってはいけない」、どうしても無難な方向を選び、試すことに消極的になる。慎重に思慮深い子も賢い一面をもっているが、やらずに後悔するより、やって次に生かした方が時間の無駄は省けるのではないだろうか。
 空気を読むことは、周囲や相手のことがよく見える、肯定的な意味で使われるが、求めすぎるのもよくないと思う。空気が読めないと言われる子は、自分の興味関心が強いのであって、周囲のことを考えず「やりたい」「やっちゃえ!」と踏み出す傾向がある。周囲から見れば無茶だと思われ、結果として失敗したとしたとしても、その過程で多くのことを学び、やり切った達成感はある。やらないより、やった方が経験値は上がる。
 子どもの試す力を伸ばすためには、試したことで得た結果ではなく、試したことそのものを評価してあげればいい。「ダメだったけど、面白かったね」と。結果は二の次、要は経験をたくさん踏ませることが、後の、人生の生きる力になる。
 子どもが迷路で遊んでいる。うまくゴールしたときも、ゴールできたという結果を褒める、それはそれでいい。それよりも、チャレンジしたこと、そして、ゴールできなかったとしても、行き止まりから引き返したり、もう一度最初から始めたり、子どもが試行錯誤している、そのこと自体がなによりの財産、それを褒めてあげればいい。意識していなければ、そうしたところに着目するのは難しい。子どもが失敗したり、困った状況になったりしたとき、親は怪訝な表情をする。すると、子どもは敏感に親の表情をそのまま感じ取る。しかし、大事なのは、失敗したときにどうするか。そのときこそ試す力を身につけさせるチャンスだ。このような場面に遭遇しても逃げず、正面に見据えて取り組むことに学習の基本的な姿勢がある。
 一度何かを完成させたら、次の瞬間にそれを破壊する、殻を破る。できたことに安住しない。100点を取ったら終わりではなく、もう一歩踏み込んで勉強する。仕事でも一つを成し遂げた時点で終了、過去を捨てるのではなく、新しいプロジェクトに取り組む。そうした次の挑戦の起点にする力、試行錯誤する力は、生涯学ぶことの基本的な学習の姿勢だ。これで終わりはない。何かを達成して「よし、できた!」と思ったとき、同時にそれが破るべき殻になる。それを破って新たな挑戦をする。“挑戦"とか“向上心"という言葉を必要としないほど、それが当たり前になっている。学習でいえば、問題を解けたとき、そこで終わるのではなく、さらにその先まで理解を深める習慣を持つことが学ぶ基本習慣だ。だから試す力を日々の学習の中で育てていきたい。

西郡学習道場代表 西郡文啓