西郡コラム 『毎日、音読してわかること』

『毎日、音読してわかること』 2023年6月

 朝6時30分、挨拶のあと、画面に映し出した箇条書き「自分で起きます。6時30分に参加します。画面の中央に顔を映します。発声、音読に集中します。サボテン(計算)に集中します。ごまかしたり、かくしたり、できたふりをしたりしません。正直な子どもが、学習ができる道場生です」を私が読み上げるところからオンラインの朝道場ははじまる。
 子どもたちは口の動きがよく見えるように顔を画面に映して、お腹から口まで息の道が真っすぐになるような姿勢をとる。基本になる母音「あいうえお」の口の形をつくって何度も声を出す。続いて「五十音」「あかさたなは…」「アイウエオ、イウエオア…」「あああ、ああ、あっ、あー」といったメニューを日替わりで練習する。「サ行、ハ行、ラ行、鼻濁音」などは、わざとらしく口を開け閉めして舌も動かし発声する。毎日やるから、口のまわりの筋肉がほぐれ、滑舌の悪い私でも端折らず濁らず、はっきりと音が出せる。「口を開かず、もごもごと話しても相手に言葉は伝わりません。音として言葉がはっきりわかるように届けてはじめて会話になり、コミュニケーションが生まれます」、こう話して音読に進む。
 音読は①四字熟語10個、②ことわざ10個、③俳句5句(俳句、詩、古文)、④1分間約400字程度の文章、⑤漢字という構成をとり、週替わりで中身を変える。約10分間、テンポよく、一気に、より速く音読する。初日の月曜より金曜のほうが滑らかにスラスラ音読できることを体感する。
 「四字熟語」の音読では、たとえば「奇想天外」を3回続けて声に出して読むと4回目は暗唱できる。繰り返し音読すれば、一瞬にせよ誰でも覚えられることがわかる。一日に3~4個の四字熟語の音読、暗唱を繰り返す。木曜は最初の2文「奇想」を私が唱えると、子どもたちは「奇想天外」と暗唱する。ほか9個の四字熟語も続ける。金曜は10個の四字熟語を一気に、はっきりと、より速く、3回連続して音読する。詰まることも淀むこともなく言いきることは難しく、極度の集中力がいる。ちょっとでも目が逸れる、躊躇すると言葉が詰まり言い淀む。詰まった、淀んだ、「しまった」が頭をよぎると、また遅れる。連続3回の一気読みは集中力、没頭力を高める。
 ことわざ10個も同じ方法で音読、暗唱する。大きな声ではっきりとテンポよくリズミカルに声を出すことで日本語の語感やリズムを体感し、音読に集中することで心身の解放を生み、音読が自己表現になる。「四字熟語もことわざも、いまは意味がわからなくてもいいです。いずれ、出合います。音読することに集中しましょう。朝道場は言語感覚を磨き、集中力を鍛える場です」
 俳句も3回続けて声に出して読み、4回目は暗唱する。一日一句を覚え、五句を覚えたところで私が初句を唱えれば、子どもたちはその句を暗唱する。「今日の俳句『夏(なつ)河(かわ)を 越(こ)すうれしさよ 手に草履(ぞうり)』(与謝(よさ)蕪村(ぶそん))、イメージできますか。草履はいまでいえばサンダルですね。サンダルを手にして、夏の川を歩いている絵、一枚のスナップ写真です。計算や漢字ドリルのように、俳句はイメージの練習ドリルです。ちなみに、この俳句が詠まれたのは江戸時代です」。音読が惰性にならないように、こんな話を入れる。
 『走れメロス』『よだかの星』『杜子春』など400字程度の文章を抜粋して1分間、音読する。1度目は私と一緒に音読して、2度目はタイムを表示、子どもだけで音読して1分経てば終了する。一瞬でも目が逸れ、散漫になると言い間違える。1分間約400字スラスラ音読は読むという行為の基本練習であり、読解力の基礎になる。何度読んでも同じ音読はない。同じを繰り返すとマンネリで飽きると言われるが、毎回違う、新たな何かを感じれば音読は最適な学習になる。
 最後は漢字の読みを音読する。習った漢字をフラッシュカードのように、たとえば「思い出」「思考」を映し出し、次に「おもいで」「しこう」の読みの画面にうつる。一日約35の漢字(訓音で70)の読みを音読する。3年生で習う漢字は160、一日35の漢字を音読すれば1週間で読み終える。1年間で何度も繰り返す。「習った漢字の読みです。読みだけではなく、書くこと、使うことを意識して音読しましょう」と声をかけてから始める。漢字の知識として部首、六書、熟語の組み立て、都道府県名も音読する。
 発声、音読は一気にやるから12~13分で終わる。短い時間でもこれだけのことが毎朝、音読できる。国語も英語も語学の基本は音読、暗唱すること。毎日やるから力になる。毎日やるからわかってくる。

西郡学習道場代表 西郡文啓