高濱コラム『保護者のみなさまへ』2020年4月

『保護者のみなさまへ』

 S F 映画のように、世界が異次元に入ってしまったかのごとき日々です。お元気でお過ごしですか。

 オンライン化への決意を表明した 4 月上旬から、保護者のみなさまにも準備などのご負担をおかけしたと思いますが、ともに歩んでくださったこと、 感謝いたします。本当にありがとうございました。やってみたら、子どもたちの柔軟さと吸収力の高さに驚かれたのではないでしょうか。おかげさまで、応援のメッセージも多くいただいていますが、まだまだ何度も改善を繰り返すべき時期。忌憚のないご意見をお寄せくださると助かります。

 それにしても、感染が収束する目途にせよ、経済がどこまで落ち込むかの問題にせよ、長い長い出口の見えないトンネルの中にいるようで、気が滅入りそうになる方も多いのではないでしょうか。私は、親御さんの心を最も心配しています。

 中には、 「あんなにかわいかった子どもが、イライラの元になってきてしまった」と感じ、そのことで自己嫌悪になりそうな方もいるかもしれません。しかし、自分を責めすぎないでください。まったく経験のなかったことで、心理的な落とし穴にはまっている状態でもあると思います。

 心理的な落とし穴とは、 「人間はどんなに愛する人・仲良しだと感じている人とでも、24時間空間をともにすると、たいてい不機嫌になる」ということです。かつて大学に入ってすぐ、山登りをする仲間に誘われて、南アルプス縦走をしたことがあります。5 人のジェントルマンで打ち解けた親友たちだったのですが、そのとき教えられたのは、 「体力よりも心で問題が起こる」ということでした。 遭難の多くは、 メンバーのぶつかり合いから始まるのだ、と。いやいやこのメンバーなら大丈夫でしょうと思っていたのですが、行ってみると、トイレ以外は完全にいっしょに過ごす日々の中で、友への不満が芽生えるのを感じました(それも、 「今こいつ、人のこと考えずにゴハンを多くよそった」というレベルです。笑) 。

 1 週間だったので大過なく終えたのですが、長期間だったら爆発していたかもしれません。同様のことは、少人数での海外旅行などでもよく聞く話です。 「行きはハッピー、帰りは決裂」の悲劇。私たちは、そういう社会的スイッチというか弱さを持ち合わせているのだから、ある程度仕方ないよなと受け止めましょう。もともと 「時々離れるから愛し合える存在」なのです。そして、コロナ問題が落ち着くまでには、山あり谷ありを繰り返す長い期間が必要だとすれば、立派な人間であろうと無理したりせず、どう発散するかを考えましょう。

 方法は無数にあります。 「ママがお仕事をしている1時間だけは、絶対に話しかけてはいけない」というルールを徹底して、楽になれたという方もいますし、 「好きな本を読みふけっているんですよ」と、わが子が大好きなものに没頭する時間にしているという方もいます。ちなみにこれは、相当筋が良い手段です。他にも多種多様な、自分の時間と空間を取り戻す方法はあります。

 その中でも、普遍的に効くなと感じているのは、やはり「つながること」です。花まるだより 2 月末号巻頭文でも書いたのですが、H U C (母親アップデートコミュニティ)というお手本があります。置かれた立場などは実に多様なのですが、基本的にはネットでのつながりを土台にして、親同士が話したり共感しあったりする中で、深い信頼でつながり、健やかさ・安心感を手に入れているのです。子どもにこれを言ったらうまくいったというような「子どもの課題」 としての解決ではなく、 「私 (親)の心の問題」として焦点化し、誰かに共感してもらって分かちあうことで、救いを手に入れようというものです。

 そういう意味では、花まる教室長の一つの役割が、まさにそれです。保護者とつながり、 気持ちを受け止めること。 行き詰まってしまったときは、どんなことでも連絡してみてください。また他にも、 「花まる子育てカレッジ」の動画群も、ただ親御さんの力になれればという思いで創り上げてきたものです。 「自分のための時間」として利用していただき、少しでも力になれば幸いです。

 すべては子どもたちの未来のため。みんなでつながり、 助け合い、 歩んでいきましょう。

花まる学習会代表 高濱 正伸