Rinコラム 『他者性』

『他者性』2006年3月号

今学期も、残すところあと一ヶ月。今のメンバーで、今の担当の先生といっしょに勉強する最後の日が、近づいてきています。

早くもFCに移動する3年生たちが2月からいなくなり、低学年の教室は少し寂しくなりました。4月からの新しい仲間が今から待ち遠しい講師陣です。
かわって年中さん・年長さんクラスは、何人かの新しいお友達が加わったことで刺激を受け、群れのダイナミズムが、よりお互いを高めあう方向に動きつつあります。

年中さんでのエピソードです。
皆で移動する際、遅くなってしまった仲間に気付いたある子が立ち止まって振り返り、それから後ろに手をぐいとさしのばし、追いつくまで待ってあげたのです。自己中心―全ては自分を中心に回っていると感じている―なのが、この時代の特徴なのに、です。
誰にいわれたわけでもなく、そんな風にお友達の気持ちを察してあげることができる、優しさ光るエピソードには、講師みんなで感動しました。

年長さんはもうすぐ一年生。
天真爛漫に見える彼らですが、その純真さゆえに、鋭い観察力・豊かな感受性は、まるで宝石のようにきらきらに輝いており、私はいつもまぶしささえおぼえるほどです。
授業中「お手伝いマン」に任命されると張り切って仲間の手伝いをやる子も、以前は相手のものを取り上げて自分が作ってしまっていたのが、自分のピースで説明しようとするなど、より相手の立場になって行動することを学んでいると分かります。
そうやって少しずつ経験を積むことで、相手との上手な距離感をつかみ、周りの気持ちを考えて行動できる素地を身につけていくのでしょう。

さて高学年以降になり、国語など記述式問題を解くときが必ずどの子も来るでしょう。
たとえば、試験問題ひとつとっても、出題者の意図を読めるかどうか、採点者に分かりやすく伝えられるかどうか。そして、作者が何を伝えたいのかを、自分の世界で判断してしまわずに、正確につかめるかどうか。
常に「他者性」が問われるのです。これまでの彼らの人生経験にも大きく左右される、一朝一夕には伝えることができない力。

結局は、豊富な体験と、そこで感じ、自分で考え、身につけたものこそが、その人を作るのだと思います。そしてそれは、幼ければ幼いほど影響力が大きい。
雪国スクールの申し込み締め切りはもうすぐ。迷っている方はぜひ背中を押してあげてください。年中さん年長さんは、一年生のサマースクールまで、お待ち下さいね。

PS 年長さんは、先日の硬筆大会で、立派な姿勢で「自分の夢」を書き上げてくれました。教室に貼り出していますので、ぜひ見に来てあげてください。
大きくなった彼らが何になろうと、どんな風に他者と関われるかということが本当の幸せをきめるのですね。