高濱コラム 2008年 5月号

 舞い散る桜吹雪に目を奪われていたのもつかの間、いつのまにかフンワリした黄緑や黄色の若葉が、あちこちの樹木から芽吹いています。しばらくは緑葉の色彩の変化、生命力を感じる美しさに、幸せを感じられる季節です。

 この4月で、花まるグループは、満15歳になりました。新年度は16年目となりますが、無名無実績の黎明期に、生徒になってくれた子たち、その保護者の皆様、教室を提供してくださった幼稚園の園長先生・・・。多くの方々との出会いに恵まれ、今日を迎えることができました。あらためて感謝いたします。

 思えば、ただもう一心不乱の15年でしたが、振り返れば、算数脳・なぞぺー・サマースクール・父母学校や講演会・キューブ教具・パズル・中学受験・高校受験などなど、結果としてやってきたことのほとんどが、この3年ほどで出版されるようになったことは、望外の喜びです。このことは、冷静に見て、7年ほど前から続々と魅力的な若者が正社員として入社してきたことが、流れを作ったと思います。個人商店では克服できない多くの障壁を乗り越えることができ、組織として強くなりました。

 ご存知ない方も多いと思いますが、花まるグループそのものももちろん発展していますが、アルゴクラブという数理思考力の専門教室が、今全国の塾を舞台として広がっていて、その授業の運営方法は「花まるメソッド」ですし、授業設計は私が担当しています。各地の名だたる大手塾が取り入れていて、数千名の規模になってきました。価値判断においてもっともシビアな塾に続いて、私立学校が次に来て、最後に公立学校にも花まるメソッドが取り入れられると信じています。

 しかし、景気の良い話ばかりではなく、もちろん課題はたくさんあります。ほかにない売り物がある反面、同業他社というか一般の企業ならば当然あるサービスに欠けると指摘されることがあります。例えば「紹介キャンペーン」。せっかく紹介してくださった方の気持ちに、ポイントなり粗品なりで応えるのは常識なのに、今までやれていなかった。このことは、近々に15周年記念企画として打ち出す予定です。ご期待ください。

 16年目開始の抱負は、創造性です。子どもたちに、「作ること」の豊かさを伝えたい。「理不尽をはねのけて生き抜く力」を目標にしている花まるですが、創造性に溢れていることは、その重要な柱になります。一例ですが、『小3までに育てたい算数脳(健康ジャーナル社)』に、子どもたちが作った詰めアルゴのパズルを掲載したのですが、載せた4人のうちの中学入試に回った2名は、開成中学と明の星中学に合格しました。楽しく作り続ける力が、現実の成果をもたらした事例です。

 花まる学習会の生徒に春休みに出した「手づくりパズル」の宿題は、すごい手ごたえでした。専門の私でも見たことのないオリジナルパズルや、ご家族で議論があったんだろうなというもの、意表をつく巨大迷路など、魅力的作品がたくさん集まりました。この「手づくりパズル運動」は、今後スクールFCでもぜひ推進していきたいと思っています。ご協力をお願いします。

 一方で、講師陣にも創造的人生を要求していきたい。全員がジャグリングをやれて、絵なり音楽なり文学なり創造的フィールドを一つは持っている人たちの集まりにしたい。何故なら、古今東西優れた教育者は同時に芸術家でもあったし、感じることに優れ、作る感動を知っている人は、間違いなく子どもたちに良い影響を与えると信じるからです。

花まる学習会代表 高濱正伸