高濱コラム 2009年 1月号

正月早々、近い人間の中に、認知症の初期を疑われる症状(何度も何度も同じことを聞く、財布やカバンの中を繰り返し何度も確認するなど)が出てしまいました。他人事だと「認知症か、大変だね」と、さも分かったような反応をしていたのですが、いざ、我が身になると、どうすれば良いのか分からず困りました。

こういうとき、私は高校の同窓生(熊本高校昭和52年卒業の同級生)のメーリングリストに、質問を入れます。すると、数時間のうちに、□□大学の○○先生に診てもらうのがよい、どこどこに同級生でもある△△が開業しているからまず相談してはと、たくさんのアドバイスが返ってきました。複数の医師からも、症状をとらえる視点や薬などについて、緻密な解説がありました。

また、ケアの仕事を専門にしている人間や、実際に認知症の家族を抱えている人たちも、どういうことに気をつけたら良いか、なった人にしかわからない経験談を書きこんでくれました。そのどれもが、誠意と思いやりに満ちていて、本当にありがたく、ああ、みんな頑張っているなあと感じ勇気も出ました。持つべきものは友人です。

さて、そんなアドバイスの中に、発見がありました。それぞれは、切実な介護の実状を書いているのですが、「歩く」ということが、隠れたカギになっていたことです。膝や腰をやられて、歩けなくなったとたんに、急激に症状が現れたというケースが多かったし、また一方で、母親に症状が出たときに、父親が無理やりにでも長い散歩に連れ出し、毎日歩き続けたという人などの病気の進行が、非常に遅くなったというケースが、いくつかあったのです。歩くということは、本当に大事なのだなあと感じました。

そんな折も折、なぞぺーをデジタル化した「デジなぞ」を作っているLEDEXという会社が、デジなぞを下敷きにして、高次脳機能障害が専門のドクターの監修により、「高次脳機能バランサー」というソフトを製作しました。完成記念の食事会で、そのお医者さんと会うことができたのですが、「気鋭の」という表現がピッタリの切れ味抜群の方で、たくさんのことを教えてくれました。

やはり「歩く」ことは、効果的ということで、有酸素運動であることも良いのだそうです。とても面白かったのは、そういうキーワードとしては、「子ども(子どもとかかわっているだけで、正常に近づく)」「動物」「音楽」など、いくつかあるのだけれども、肝心なのは「やる気」だということです。よくホームなどで、老人たちがお遊戯をやっているけれども、お遊戯が嫌いな人にとってはむしろ逆効果。同じように「動物」だ「子ども」だと言ったところで、それを若い時代に好きになっていないと、効果はないのだそうです。つまり、若い時代に様々な経験を積み、色んな「好きなこと」の幅を広げておくことが大事なのだということです。

そういう意味では、運動能力が80年代に比べて格段に落ちたというデータが出ている現在の子どもたちは、歩くことが効果的とはわかっていても、楽しめずやる気のない老人、すなわちどんどん病状が進行してしまう年寄りになってしまうかもしれませんね。大枠として不況の時代であることが、はっきり見えているのであるならば、ガソリン代だってばかにならないし、家族みんなで散歩や山歩きを楽しみ、歩くことの良さを再確認するのも、ピンチのときをチャンスに活かす手立てのひとつかもしれません。