高濱コラム 2009年 2月号

 創立15周年のお礼で挨拶周りをしていたら、とある幼稚園で、一生懸命庭を掃いている先生がいます。ずいぶん身を入れて、いい掃除ぶりだなと思っていたら、振り返ると、10年以上前に中学生として数学を教えた子でした。その幼稚園の園長先生の娘さんです。数年前に見たときよりも、挨拶・立ち居振る舞いなど社会人としてとてもしっかりした印象で、成長ぶりを嬉しく感じました。

 園長先生と話をしていると、実はこの4月から入る新人君が花まるで講師をやってた人なんだとおっしゃいました。今もう研修で入ってるよというので、呼んでもらったら、講師どころか、小学校から花まるの会員でずっと育って、大学時代も講師をやってくれた子でした。ここに勤めるというプロ意識が芽生えたのか、ちょっと前までよりもずっと大人びて見えました。
 親となると、子どもの骨格が大きくなり、育ちを感じることが喜びとなりますが、教育にたずさわる者として、社会人として一人前になって働いている教え子の姿を見ることほど嬉しいことはありません。本当はご両親を始め、多くの方の力を合わせたすごく大きな力に支えられて現在の彼女はあるのですが、ちょうどアルバイトで配管の末端を手伝っただけなのに「このビルは俺が建てた」というような満足感があるのと同じで、「この子は私が育てた」という充実感となって、幸せで満たしてくれます。

 そもそも現場の授業が最高に楽しく、毎日毎時間決して飽きることなく、子どもの可愛らしさと触れ合える(特に花まるは、サマースクールや雪国スクールなどで、炸裂するように輝く笑顔に触れられる)上に、卒業してからも、このように育った彼らの姿に時々触れて、しみじみとした感動を味わえる。教育って本当に素晴らしい仕事だと思います。また、多くの方の応援や支援でその仕事を続けてこられたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

 今年は、創立年度に小学2年生だった世代が、大学を卒業する年なのですが、どこそこに就職しますと挨拶に来てくれることも、増えました。自立した彼らが、今度は結婚し家族を持って、子育てをし、また仕事で活躍していく姿も見られると想像すると、未来も夢一杯です。

 さて、漢字を読めない首相を頂いたこの国は、100年に一度と言われる大不況にはまり込んでしまいました。今まで順調だったことなどまったく何の保証にもなりません。経済的に逼迫して泣く泣くやめるという、15年間なかった事例も出てきましたし、新聞では過去最悪の決算の情報や、倒産のニュースがあふれています。明日は、どうなるかわかりません。

 アルゴクラブを通じて、全国で花まる方式の授業が広がっている今、昔とは規模が違うのですから、私ももっと経営に専心すべきなのかもしれません。しかし、やはり向こうから全力で走ってくる1年生を迎える現場は離れがたいですし、一方で、スクールFCでの特算やスーパー算数など、最も頭の良い時代の子どもたちとの研ぎ澄まされた思考バトルのような授業の醍醐味も、かけがえのないものです。何とかプレイングマネジャーで、がんばり続けたいと思います。

 花まるは、保護者の皆様の口コミでこそ、存続を支えられてきました。今年は、始まって以来の危機感を抱いています。何とか、一人のご紹介をお願いいたします。

花まる学習会代表 高濱正伸