高濱コラム 2009年 3月号

石川県の県立高校で、「16歳の教科書(講談社)」の私の担当した文章が、入試問題として使用されたというお手紙をいただきました。これまでも、明らかに「なぞぺー」をヒントにして出題されたなという例は何度かあったのですが、文章部分がそのまま引用されたということは初めてです。世の中に認めてもらった、なんとも言えないしみじみとした喜びが、湧き起こりました。

小論文の題材なのですが、まるまる2ページほど文章が引用されたあと、問題文が2つあります。問一「筆者は『見える力』を伸ばすためにはどうしたらよいと述べているか、二百字以内で書きなさい」、問二「傍線部『勉強と遊びって地続きにある』とあるが、遊びを通して学んだことを、あなたの体験談を入れて四百字以内で説明しなさい」というものでした。くすぐったい感じです。

この本は、すでに30万部も売れているのですが、いい気になるつもりは毛頭ありません。もともと、この本が出来上がったときに、私は編集の方に「この本は絶対売れますよ」と断言しましたが、それは私以外の6人の講師の書いたコンテンツが、素晴らしかったからです。今や有名な方がほとんどですが、真に実力を備えた人物であるということがヒシヒシ伝わってくる。6人のそれぞれの講義がとても勉強になりました。中でも特に国語の金田一秀穂さんの作文論には感動しました。つまり、他の方々の人気と実力のおかげで、広がりを持ったということです。いつか本当に彼らと肩を並べられるように、精進を続けたいと思います。

さて、2月の後半のある日、南浦和のスクールFCに、花まる・FCの6年生50人が集まりました。毎年行っている、「中学時代の過ごし方」という、私の卒業記念講演を聞きに来てくれたのです。遠くからも来てくれました。

内容は、「親の言葉にカッカするのではなく、もう『親をいたわる時代』が来たのである」「いじめのような負の経験も、真剣 に向かい合うことで将来の力になる」「身体は鍛えておけ」「友を大切に」「一流の音楽・芸術に触れよ」「大好きを極めよ」といった、心がけの部分から、内申書や入試制度などの必要知識、英語や数学の学習方法と続きます。大人から見ると、当たり前のようなことでも、初々しい12歳たちは、瞳を輝かせて聞きいってくれます。熱い感想ももらえるし、毎年「やって良かったなあ」と思える時間です。

その最後に、私は中1になる彼らに日記を勧めます。レジュメにはこう書いてあります。「ブログもプロフも否定しないが、青春期に最も大事なことは『自分と向き合うこと』。『誰にも言えない悩み・モヤモヤ・イライラ・ムラムラ』を持っていない人はいない。正直に、自分に向けて、誠実な言葉を感じるままに思ったままに書き連ねることが、将来の力になる。すなわち自分の言葉を持つこと」

「自分の言葉」。一定の年齢ともなると、それを持っている人とそうでない人の差が大きく出てきます。正直に自分と向き合い続ける中で積み重ねられるもの。「魅力」の源泉とも言えるでしょう。これから、自分を築き上げていく彼らに、ぜひ良いお手本になるようにと、6人の先達(しかも発展中の)の「自分の言葉」が充満した「16歳の教科書」を、全員に手渡しして、会を終えました。