松島コラム 『経験量とイメージ力』

『経験量とイメージ力』 2018年6月

 5年生が1学期に学習する「差集め算」という単元があります。
 「1個50円のリンゴを何個か買うつもりでちょうどのお金を持っていきましたが、1個30円のミカンを同じ個数だけ買ったので、180円あまりました。お金はいくら持っていきましたか」

 リンゴとミカンの1個の値段の差が20円ですから、180÷20=9(個)買う予定だったことがわかります。したがって、50×9=450(円)が答えです。実際にお買い物に行ってから、予定していたものとは違うものを買うことはありますよね。
 この問題では、「全体の差÷1つあたりの差=個数」という差集め算の基本公式を知らなくても、リンゴとミカンの図を書いていけば解けそうな問題です。ところが次のような問題になると、少しイメージする力が必要になります。

 「子ども会で折り紙を配ることにしました。1人に5枚ずつ配ると折り紙が17枚あまり、1人に7枚ずつ配ると9枚不足します。折り紙は何枚ありますか」
 最初に考えなくてはいけないのは、全体の差です。
 「17枚あまる」と「9枚不足」とでは、当然その差は26枚になりますが、数字だけをおいかけて「8枚」と答えてしまう子が意外に多くいます。大人からすれば当たり前のことが子どもにとってはそうではない。これは経験総量の差とも言えますが、子どもどうしでもその差は見られます。
 近頃は子ども会の活動が減っているようですが、私の子どものころは、子ども会の行事でお菓子の仕分けを手伝ったり、レクレーションに使う折り紙を人数分用意したり、前出の問題に近い状況を想像することはできました。最近の子どもには、ハロウィンやクリスマスという設定のほうがイメージしやすいのかもしれません。
 この問題では、全体の差は、17+9=26(枚)ですから、子どもの人数は、26÷(7-5)=13(人)。したがって、5×13+17=82(枚)が答えです。次の問題では、さらに高度なイメージ力が要求されます。

 「かごにクリを7個ずつ入れていくとクリが16個あまります。9個ずつ入れていくとクリが5個しか入っていないかごが1個と、何も入っていないかごが2個できました。クリは全部で何個ありますか」

 実際にお皿とアメを使って実験してみればわかりやすいのですが、問題を読んだだけで次のように考えられたら、立派な「算数脳」の持ち主です。
 9個入れる予定のかごに5個しか入れられなかったのだから、不足は4個(ここがポイントです)。さらに、何も入っていないかごが2個だから、9×2=18(個)が不足しているので、全部で4+18=22(個)不足している。全体の差は、16+22=38(個)なので、38÷(9-7)=19(個)がかごの数。したがって、答えは、7×19+16=149(個)。

 先日の円すいの単元の授業では、実際に展開図が本当に円すいになるかどうか、紙とはさみを使って確かめてもらいました。こうした作業を通して円すいやその展開図の特徴を学ぶと、記憶にも残り、その後の問題でもイメージしやすくなります。
 余談ですが、私は円すいの展開図を見るとタケノコの皮を思い出します。今の時期、実家の裏にある竹林から真竹のタケノコをとってきて家族で皮むきをします。皮をむくたびに元に戻ろうとする力でクルっと丸まるのが面白くて、私はそのお手伝いが大好きでした。タケノコの皮に梅干しを包んでしゃぶるのも楽しみでした。
 実体験で身につけたことはよく覚えています。日常生活の中にも想像力を育む素材はたくさんあります。天気のよい日はぜひお子さんとお出かけください。

スクールFC代表 松島伸浩