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2020年1月7日(火)

2020 新春スペシャル対談! 井本陽久(いもいも)×高濱正伸(花まる学習会代表)

2020 新春スペシャル対談!

子どもたちを“見る目”

Vol.1

井本陽久|いもいも主宰

高濱正伸|花まる学習会代表

エビデンスではなく、子どもを見る

高濱 いま、世の中を見ていて、発信力のある人たちは、SNSとかでバズることを言って、注目を集めた人勝ちのような状態なんですよね。
極端なことをいえば、現場を知らなくても、教育はだれも語れてしまう。自分が育った環境や、わが子のことなど。大抵はその2ケースなんだけれど、なんか語れてしまう。
「アメリカでこんなデータが出ていますよ」というのがひとつあると、強めに聞こえる。それを鵜呑みにする人が多い。

井本 確かに、語る人は増えていますね。

高濱 ヘックマンの“非認知能力”も「そこだけ!?」というデータなのに、まかり通ってしまう。その程度のデータでそこまで語りきってしまっていいのかな、というのが正直なところ。
データって、人間世界の統計学に過ぎない。家族構成や、きょうだいの人数、出身地まで、無条件にすごいパターンがあるなかで、それらしく語っているけれど、アメリカ、しかも18歳以上のデータで小学校のことを語っていますよね、という矛盾。そういう疑問がたくさんある。

井本 「エビデンス」という言葉に、どうしても引っ張られてしまっている印象を受けますね。

高濱 それに関しては、いまの時代のリテラシーかなと思う部分も大きい。データ、エビデンス時代だから、親は防衛的にその”落とし穴”を知っておかなければならないよ、という。

井本 たしかに、そうですよね。

高濱 親もそうだけど、特に先生になる人たちに対しては、「見る」ということの重要性を伝えたい。
23万人の話が典型で、「23万人の人たちのデータで癌になる人が減った」と言われちゃったら、「お~」となるわけ。そうすると、「じゃあ走りなさい、あなたも」という親が出てくる。でもこの“優位に”というところがポイントで、24万人の中には、走ることで怪我をした人もいれば、心臓に負担がかかって体調を崩した人もいるんだよということを同時にわかっておかないと、わが子の子育てに生かすことなんかできない。でも結論めいたことや数値を言われたり、権威みたいな人に言われたりしてしまうと、それに流されてしまう。
*ランニングは距離にかかわらず早死にのリスク低減につながるという研究結果。米、英、中国、デンマークなどで23万2149人を対象に、5.5~35年かけて行われた14の研究を分析した。

井本 そう思いますね。現場にいて、一番現場の先生がわかっているはずのことは、「子どもたちは一人ひとり違う」ということ。だから、そもそもその子どもたちを、「こういうふうにすればこうなる」という言い方で子どもたちに接すること自体が、ものすごく不自然。ナンセンスですよ。もし、それが通じるのであれば教育なんかいらない。
それよりも大事なのは、教育現場にいる先生が一人ひとりを「見る」ということ。エビデンスというのは、ぼくも関心ないんだけれども(笑)、たとえば、ほとんどの子にこういうことが必要なんだとしたら、見ていれば自然にそういう方向に導くだろうし。
見るということに関していうと、大事なのは“目的を持たないこと”だと思っていて、たとえば、「こういうことが大事、じゃあこの子は」と、目的をもって見ると、その目的に適っているかどうかというところしか見えない。それが教員の落とし穴っていうか。

高濱 “教員の落とし穴”ね…。

井本 そうじゃなくて、「この子はどうなんだろう」と思ってみられるかどうかってすごい大事。

高濱 つまり、あるモノサシで見ちゃうってことですよね。

井本 そうですね。だから僕は授業でも、「こういうことをテーマにしたい」「こういうところでおもしろがらせたい」ということは授業前にやる、つまりデザインすることなんですけれども、実際の授業で子どもたちが想定していなかった反応をしたときに「あ、これは◯◯」というのじゃなくて、「あ、この子はどう感じているんだろう」と見る。
授業が盛り上がっていなかったり、夢中になれなかったというときは、それは次の授業の準備のときに考えればいい。
そのときは、“その子がどうだったか”を見る。そうじゃないと見えないんです。

高濱 いまの話でつくづくいえるのは、なぞぺーをつくったのもそこが原点なんだけれど、『小3までに育てたい算数脳』の「小3までに」というのは何の証拠もなかったけれど、見れば、「5年生だとだいぶ固まってしまっているな、人間って」という感じがある。
でも、1年生だったら、絶対楽しくやれちゃう。その子自身が躍動した状態で。ということは、この間(1年生~5年生)に、絶対どこか“壁”があるからだよなぁって、現場にいれば当然わかる。そこが大事なんだけれどな、ということに対して、現場を知らない人たちがわぁわぁ言うから、また炎上してしまうんだけれど(笑)

井本 子どもを見ているつもりで、エビデンスを見ている、方法論を見ているという人がすごく多いような気がするんです。
本当は、特に学校の先生は、ありがたい教育論なんて読まなくていいから、まずは自分の目で見て、自分の心で感じて、試行錯誤するということが前提にないと、本もなにも役立たないんじゃないかな。

高濱 そうなんですよね。自分の視座をもったあとは、方法論も役立つんですけれどね。
「エビデンスではなく子どもを見ろ!」って言いたい。

井本 まさに!

高濱 もしかしたら、そんなことを言うと怒る人もいるかもしれない。けれども、それは大事なことで、エビデンスが重要なのはマクロの政策決定のときなんですよね。
つまり、100万人くらい子どもがいるとして、「基本走らせる」というふうにしたほうが、全体の医療費が減るのは間違いない、そういうことにおいては生きるデータ。でも個々の現場にいる先生は、「この子は走らせないほうがいい」という判断をしなければならない。

井本 感性ですね。

高濱 そう、感性なんですよ。どっちかというと、現場って感性勝負なんですよね、絶対的に。

井本 僕もそう思いますね。理屈でもなんでもなくて、感性です。

高濱 おもしろくなさそうだなと思ったら、もうなんかしなきゃいけない。こっちの段取りとかエビデンスがどうであれ。

井本 そうですね。「見る」ということは大事だけれど、素直にやればいいいのに難しくしちゃってるんですよね。

高濱 知識が邪魔することもね。

井本 そうですね。

高濱 輸入モノの教育を語る人たちって、あるものを鵜呑みにして子どもを見ていないんですよね。
しかもそこで商売しようとすると、「◯◯が完璧です!」と言わないといけないからさ…。でもそこにずっと違和感があるんだよね。
資格を新しく作って儲けようみたいな人たち、なんか違うなーと。
シンプルに、みんながただ自分の裁量で「よく見る」ということができれば、そういう◯◯論とか、◯◯メソッドみたいなのって、全部いらない。

井本 そうですね。「自分の裁量で」ということがすごく大事。失敗してもいいから。

高濱 うん、失敗してもいい。

井本 先生って繰り返せるんですよ。
試行錯誤が、他の仕事のなかで、もしかしたら最もできる仕事かもしれない。
自分の裁量で、本当に自分の目で見て、試行錯誤する。決定的に大事だと思います。

高濱 議論としておもしろいのは、なんでみんなやらなくなるんですかね。

~Vol.2に続く~

\放映予定/
🌸プロフェッショナル 仕事の流儀
1月7日(火)22:30~ (NHK総合)
答えは、子どもの中に ―数学教師・井本陽久―
https://www4.nhk.or.jp/professional/x/2020-01-07/21/7558/1669571/

※放送予定は予告なく変更となる可能性がございます。あらかじめご了承ください。

🌸井本陽久主宰「いもいも」|今、この瞬間に生徒が躍動し、没頭する授業を
「いもいも」は学校の成績を上げることを目的にしていません。「いもいも」で何より大切にしているのは、
・自分の考え方で考える
・自分のやり方でやる
ということ。いもいもの子どもたちは、安心して「自分」を発揮しながら学んでいます。

いもいもHP|https://www.hanamarugroup.jp/imoimo/

🌸井本陽久講演会「ダメでいい、ダメがいい。」
1月28日(火)、2月18日(火)3月24日(火)
詳細・お申し込み|https://www.hanamarugroup.jp/kouenkai/koenkai/20724

🌸花まる学習会
子どもたちを「メシが食える大人」「モテる人」に育てる学習塾です。

花まる学習会HP|http://www.hanamarugroup.jp/hanamaru/

🌸井本陽久について、もっと詳しく知りたい!
『いま、ここで輝く。~超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室~』
おおたとしまさ/著
(エッセンシャル出版社)

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